水溶性切削液の腐敗メカニズム
水溶性切削液とは?
水溶性切削液とは、水で切削油を希釈して生成される切削液です。水溶性切削液には、下記のようにメリットが多く、現在では水溶性切削液が主流となっています。
- 冷却効果が高い
- 不水溶性切削油と比較して低コスト
- 廃棄時の環境負荷が低い
しかし水溶性切削液には、上記のように腐敗してしまうというデメリットがあります。この水溶性切削液の腐敗には、希釈元となる水溶性切削油剤の種類や使用期限も大きく関係してきます。そのため水溶性切削液は、使い続けていくと、いつかは腐敗してしまい、全交換も必要となっていきます。
しかし重要となるのは、いかに長期間にわたって切削液を使い続けることができるか、という水溶性切削液の使い方です。切削液の使い方によっては、すぐに切削液が腐敗してしまう場合もあります。
水溶性切削液の腐敗メカニズムとは?
まずは水溶性切削液の腐敗メカニズムについてです。
通常の水であっても、長期間にわたり空気にさらして放置しておけば、いずれは腐敗してしまいます。そして水溶性切削液も、2~10%程度の濃度に希釈して使用される切削液のため、長期間放置してしまうと、腐敗してしまいます。
しかし、条件がそろってしまうと、腐敗が加速度的に進んでしまう場合もあるので、どのような環境下で腐敗が進みやすくなってしまうのかを理解する必要があります。下記が水溶性切削液の腐敗メカニズムの流れです。
1.好気性細菌の繁殖
2.通性嫌気性細菌の繁殖
3.嫌気性細菌の繫殖
1.好気性細菌の繁殖
好気性細菌は、酸素を好む細菌です。好気性細菌は、水溶性切削液に混入する潤滑油や油剤成分等を栄養源にして、活発に繁殖します。また好気性細菌は、一般的な希釈に用いられる水道水に含まれるミネラル分も栄養源として繁殖します。その際に好気性細菌は、糖やタンパク質を同時に生成しますが、糖やタンパク質の生成時には酸素も消費してしまいます。つまり、水溶性切削液を使用し続けると、必ず水溶性切削液は酸欠状態に近づいてしまうのです。この状態では、まだ水溶性切削液からは臭い等は発生していません。また、浮上油等も見られず、通常通りに使用することができます。
2.通性嫌気性細菌の繁殖
通性嫌気性細菌とは、酸素の有無にかかわらず生育可能な細菌です。通性嫌気性細菌の中でも、主に腸内細菌・乳酸菌等が増殖すると、有機酸(低級脂肪酸)が生成されます。この酸性である有機酸によって、アルカリ性の水溶性切削液が全体的に酸性に近づき、PHが低下してしまいます。そして、水溶性切削油に機械潤滑油が大量に混入した場合は、浮上した油分が切削液全体に蓋をするような形となり、空気を遮断してしまいます。
3.嫌気性細菌の繫殖
嫌気性細菌とは、酸素を嫌う細菌です。嫌気性菌は、好気性細菌が酸素を消費すると同時に生成した糖やタンパク質を栄養源に増殖します。そして嫌気性細菌は、代謝物として硫化水素やメルカプタン(アルコールの酸素原子を硫黄原子に変えた、メルカプト基-SHをもつ化合物)等を放出します。これらの生成物により、水溶性切削液から悪臭が発生したり、切削液の色相が黒く変化したりしてしまいます。このような状態になると、水溶性切削液が腐敗してしまった、と言える状態になります。このように、水溶性切削液が腐敗してしまうメカニズムにおいて、中心となる存在は「微生物」です。微生物は、加工現場において、例えば下記のような場所に存在しています。
・加工物
・工具
・加工機
・タンク
・希釈用の水中
・各種添加剤
・作業者の衣服
・空気中
あらゆる場所に存在する微生物の混入や侵入を防ぎ、加工現場を完全な無菌状態にすることは、現実的に困難となります。そのため、水溶性切削液の腐敗防止には、微生物の増殖防止への対策が重要となり、切削液を適切に管理し続ける必要があります。
水溶性切削液の腐敗を防止する方法とは?
微生物が生育するのには、大きく4つの要素があります。
・温度
・pH
・水分量
・栄養源
そのため、それぞれの要素を適切に管理することが、水溶性切削液の腐敗防止につながります。温度やpHは測定しやすく、管理もしやすい要素になります。特にpHについて、一般的な微生物はpH≧9.0の環境下では、増殖が抑制されるため、水溶性切削液をアルカリ性に保ことが必要になります。またクーラントは、およそ90%は希釈水で構成されています。そしてこの希釈水には、微生物の中でも好気性細菌が必要とする、ミネラル成分が多く含まれています。つまり、水溶性切削液の腐敗を防止するためには、ミネラル分が適切にコントロールされた希釈水を使用し、pHや温度を適切に管理し続けるという2点が重要となります。
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